東南亜細亜掬魚紀行外伝
植物漫遊記


植物漫遊記シリーズ2006
BRASIL
Espirito Santo

Domingos Martins

ヴィトリアの西、60Km程の所にある山間部の町です。ドイツ系の人たちが多く、現在の町名はPernambuco革命の英雄、Domingos Jos Martinsにちなんでつけられました。自然の多く残る地域として、よく知られています。

今回の旅行でのブラジルのフィールド初日ということもあり、まだ勘がつかめない状態だったので、今から考えると「ああすればよかった」「こうすればよかった」と反省点の多い一日でした。

なかでも最も残念だったのは、ロベルト・カウツキー氏にお会いできなかったことです。カウツキー氏はたくさんのブロメリアを新種発見されている方で、ドミンゴス・マルチンス在住です。ご自宅の温室を一般に公開されていますので、日系のランを育てていらっしゃる方から場所を教えていただきました。ところが、運悪く、氏は最近足を怪我されて、現在息子さん宅でリハビリ中とのこと。奥様が自宅にいらっしゃれば温室を見せていただけそうだったのですが、残念ながら筆者が訪れたときには奥様もご不在でした。写真も撮り忘れました・・・

↑郊外の木の上に咲いていたカトレア
↑ナーセリーを見つけたので、情報収集のため立ち寄りました。
↑ランやブロメリアが沢山おいてあります。

仕方がないので、とりあえずドミンゴス・マルチンスを出て、本日第2の目的地ペドラアズールへ向かいます。 途中高い木の上にブロメリアが着生しているのを発見、早速森に入ってみました。林床は湿度が高く落ち葉がつもっています。また、驚いたことに沢山のティランジアが落ちていました。日本でもよく目にするウスネオイデスとソフトリーフタイプのストリクタです。これは主にサルなどの動物の活動に伴って落下した物のようです。木の上には特徴的な花序をもつVriesea bituminosaが着生していました。

↑高ぁ〜い所に着生しています。
↑Vriesea bituminosaの様です。
↑Vr.bituminosaの実生株
↑遠くの岩山には大型のブロメリアが沢山着生しています。さあペドラアズールへ!



Pedora Azul

ペドラ・アズールとは青い岩という意味です。巨大な一枚岩でできた岩山で、表面に自生する地衣類によって山全体が青っぽく見えるところからそう呼ばれています。ここは国立公園になっていて、遊歩道は途中までしか入ることができません。駐車場からゲートをくぐると赤土の遊歩道脇に真っ赤な大型のブロメリアが植えられています。Alcantarea vinicolorです。そこからしばらく遊歩道は3Km程草原の中を通っています。ここは国立公園ですが、馬が放牧されているので、かつては牧場だったのかもしれません。

↑ほんとに巨大な岩山です。
↑駐車場脇に植えられているAlcantarea vinicolor ↑草原に生えていた地生蘭(Sacoila.sp)。葉がないので腐生蘭と思われます。

草原といっても結構アップダウンが有るので、なかなか疲れます。日頃、いかに運動不足かわかりますね。草原には所々にオレンジ色の花を付けた地生蘭が見られました。周りの草をかき分けて葉の写真を撮ろうとしたのですが、花茎しか見あたらないので、おそらく土中の菌類と共生関係にある腐生ランと思われます。草原にはぽつぽつと木が生えていますが、非常に乾燥しているにもかかわらず、地衣類がびっしりと付いています。おそらく夜間に大量の霧が発生するのでしょう。こういった環境に適応しているブロメリアの仲間、ティランジアを探しますが、草原の木にはあまり見られませんでした。ストリクタもしくはテヌイフォリアと思われるものがいくつか着生していただけでした。

遊歩道の終点は岩山の麓の林の中にある休憩所です。小さな展示室があって、このあたりに生息する動植物の標本や写真がありました。この休憩所から先は特別な許可がないと入ることができません。レンジャーのおじさんに話を聞くと、入ることのできる岩場があるとのこと。道を教えてもらって早速そこへ向かいました。

↑休憩所。奥の建物は展示室
↑草原で飛んできた大きなコメツキムシ(約5cm)。タマムシのように緑〜オレンジの光沢がありとても綺麗でした。
↑T.テヌイフォリアでしょうか?ティランジアは少ないようです。
↑左の木には地衣類がびっしり付いていました。

草原の遊歩道から脇道にはいると、急な下り坂が小さな谷川まで続いていました。谷川を渡ると、その水源になっている岩盤が目の前にそそり立っています。勾配は40°ほどでしょうか。岩盤にはAlcantarea vinicolorが大群生地を作っています。植物は岩盤の表面に島状に群落を作っており、そこからしみ出した水分が小さな流れを作っているようです。岩が塗れているところは藍藻類が繁殖していて非常に滑りやすいため、転ばないようにしながら移動します。

群落にはイネ科の植物や、ランの仲間のエピデンドラム、ベロジアの仲間などが見られました。地生ブロメリアのピトカイルニアがないかと探しますが、なかなかみつかりません。あきらめてベロジアの花を撮影しているときに、隣の群落に枯れた花序があるのをやっと発見しました。ここにも馬が侵入していますので、かなり荒らされておりました。ピトカイルニアは硬くてトゲがあるので、食べずに引っこ抜いてしまったようです。枯れた親株が落ちていましたが、脇には新芽が出ていましたので一応問題ないようです。

↑Alcantarea vinicolorの群生地です。
↑白く光っているのは岩盤の表面に水が流れているところです。この写真の真ん中あたりに行って来ました。
↑根元にはしめった苔が生えています。
↑で、探してみると・・・居ました! ツリーフロッグ発見。
↑つついてみたら、ゆっくり這って逃げてゆきました。起こしてごめんね。
↑唯一咲いていたエピデンドラム
↑葉の感じはイワタバコ科のようですが?
↑グラスの様に見えますが、小型のベロジアの仲間です。
↑菫色の花が沢山咲いていました。
↑やっとみつけたピトカイルニア。放牧の馬に荒らされてます。
↑でも新芽はこのとおり、元気です。
↑小さな滝がありました。木の上にはT.ウスネオイデス、水中にはウイローモスがありました。
↑薄暗いところにはシャコバサボテンが岩生していました。

岩山の探索を終えて一旦駐車場に戻り、今度は来るときに目を付けていた岩に向かいました。遠目には岩の上に筒形のブロメリアが着生しているように見えたからです。ところが、近づいてみるとブロメリアに見えたのはシダの仲間で、期待していたビルベルギアなどではないことがわかりました。ちょっとがっかりしつつ、何気なく岩の上を見ていると、岩のてっぺんにちょこんと乗っている大きな球根が目に入りました。イワタバコ科のシンニンギアの仲間です。まさかこんな所で目にするとは思ってもいませんでしたので、正直、感動してしまいました。よく見ると他にも沢山の球根が着生しているではありませんか。小さな球根は半ばコケ類にに埋もれるように生えていますが、大きな球根はまるで鏡餅のように岩にくっついています。

球根生のシンニンギアには有名な、「断崖の女王」と呼ばれるSinningia canescensがあります。以前、自生状態の画像がないか調べた事があるのですが、発見できなかったので、今回の経験は栽培する上でのヒントになりました。

↑この岩の表面をよく見ると・・・
↑着生サボテンのハティオラ
↑イワタバコ科のシンニンギアの仲間。直径30cmほどの大きな球根です。自生地の写真は見たことがなかったので、見つけたときは感動しました。
↑よく見ると大小沢山の球根、着生ランなどが見られます。



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