BROMELIADS


Tillandsia ionantha
ティランジア・イオナンタ

一般に“エアープランツ”と呼ばれるティランジアの代表選手、熱帯魚にたとえるなら“グッピー”といったところでしょうか。広く分布しているために地域変異も多く、コレクション性の高い植物です。手頃な大きさと美しい花色、さらにとても丈夫と三拍子そろったすばらしい植物です。
メキシコからニカラグアにかけて分布します。
イオナンタとはスミレ色の花という意味です。

Tillandsia ionantha (Mexico)
最も見る機会の多いイオナンタではないでしょうか。比較的幅の広い葉を持ち、トリコームが葉先まで覆います。


↑同じ個体ですが、開花時には豹変します。スピーシーズナーセリーから購入。

   
 ↑オアハカ州北西部のエル・ボケロン峡谷  ↑イオナンタがたくさん自生しています。
 
 ↑赤く色付いたクランプ



Tillandsia ionantha 'Peach'

メキシコのゲレロ州、タシコ近郊で採集されたクローンです。基本変種は開花時に赤く色付きますが、このクローンはその名のとおりアプリコット色に色付きます。



Tillandsia ionantha "Druid"
メキシコのベラクルス州で採集されたイオナンタの白花個体です。黄色く色付き白い花が咲くのがドルイドの特徴です。



Tillandsia ionanntha 'Albino'

ドルイドとしばしば混同されているイオナンタの白花品種です。ドルイドとの違いは、赤い色素をまったく持たないということです。写真は上のドルイドと同じ環境で育成したものですが、ドルイドはアプリコットオレンジになるのに対し、アルビノは黄色くなります。また、日照が不十分な場合には緑色のまま開花することもあるようです。



Tillandsia ionantha "Fuego"
フエゴとは火、火山といった意味です。開花時にはその名のとおり真っ赤に色付きます。グァテマラのマングローブで発見された地域変異です。



Tillandsia ionantha 'Zebrina'

1975年に、バート・フォスター氏によって発見されました。
グァテマラ・シティからRio Dulceに向かって75マイルほどいった場所にあった大きなサボテンに着生していたそうです。
以前はイオナンタの変種とされていましたが、現在はグァテマラ産イオナンタのいち品種とされています。
通常のイオナンタに比べトリコームが多く、また、その濃淡がゼブラ模様になるのが特徴です。さらに子吹きが旺盛で、2年もすればちょっとしたクランプになります。
残念なことに、自生地は地震で破壊されて今はもうないようです。



Tillandsia ionantha from Honduras

ホンジュラス産のイオナンタということでトロピフローラから輸入しました。比較的大きくなるようです。開花時にはフエゴのような明るい感じの赤に染まります。またトリコームが全体を覆い、ほかの品種より白っぽい外観をしています。



Tillandsia ionantha 'スペシャル'

たゆみま社が販売している非常に魅力的なクローンです。多肉質の葉が密について非常に締まった外観が印象的です。「スペシャル」は正式な品種名ではなく、いわば商品名ですので、あえてカタカナ表記としています。




Tillandsia ionantha 'Hand Grenade'

その名のとおり、手榴弾型をした大型のイオナンタです。ホンジュラス産で開花しにくいとのことですが、詳細は判りません。上段の3枚は2006年頃にトロピフローラ社から輸入した個体で、下段は2012年に再度輸入したものです。明らかに形質が異なるようで、下段の個体は変種ストリクタに性質が似ているようです。

  



Tillandsia ionantha 'Ron'

すべての葉がくるりと外向きにカールするかわいらしいイオナンタです。現在、レインフォレスト・フローラ社がこのクローンを生産していますが、社長のポール・イスリー氏によると、氏がかなり以前に他のナーセリーから入手したクローンを増やしたもののようです。ティランジアの交配が今ほど盛んに行われていない時代と思われますので、筆者はもともと野生採集個体だったのではないかと推測しています。



Tillandsia ionantha ' Apretado ' ?

台湾から輸入されてきた大型のクローンです。タグがついていませんので正確な品種名はわかりませんが、普及状況と形質から判断してApretadoではないかと思われます。Apretadoはメキシコで採集された変異株で、開花しにくく、大型で成長に伴い次第に長く伸びてゆきます。この様な変異は上記のハンドグレネードをはじめいくつかの品種があるようですので、比較的多く見られる変異なのかもしれません。




Tillandsia ionantha var. vanhyningii
イオナンタとしては異色の茎が長くなる変種です。メキシコ、チアパス州、Tuxtla Gutierrez近郊のRio Grijalvaにある石灰岩の岩壁に着生しています。


Tillandsia ionantha var. vanhyningii 'Large form'
 

最近見かけることの多いバンハイニンギーとされている大型のクローンです。栽培環境の違いによるものか、同一産地のパッチ違いなのか、はたまた交配種?疑問はつきませんが魅力的な品種であることは事実です。

   
 ↑一度目の開花  ↑二度目の開花。
 ロゼットの感じが通常のクローンに近くなってきたような...


Tillandsia ionantha var. stricta
基本変種と比べ、小型で葉がとがっているのが特徴です。自生地はメキシコのオアハカ州、エルカマロン近郊です。ラベルにはストリクタとだけ記載されていましたが、ロシータと呼ばれる系統かもしれません。


↑オアハカ州西部のヨソンドゥアで見つけた個体
 


Tillandsia ionantha var. maxima

メキシコのオアハカ州テワンテペック近郊の峡谷で発見された大型のイオナンタです。通常のメキシコ産イオナンタの倍近い大きさにまで成長します。
現在は変種とされていますが、基本変種であるメキシコ産イオナンタの単なる大型クローンであると考える研究者もいます。


参考文献:FOSTER,BERT T. "A New Variety of Tillandsia ionantha "(Journal of The Bromeliad Society 32 #4, July-August 1982 p.164)
      Koide, Pamela "Tillandsia ionantha: Its Varieties, Forms, and Cultivars" (Journal of The Bromeliad Society 43 #4, July-August 1993 p. 160-164)


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