Tillandsia fasciculata
中型ティランジアの代表ともいえるのがこのファシキュラータです。北はフロリダから西インド諸島、南はペルーにまで及ぶ非常に広い範囲に分布しています。そのため変種から地域レベルの変異まで含めると、その変異の幅は多岐にわたり、研究者泣かせの植物とも言われています。非常に強健で、栽培は容易です。
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詳細不明の実生株ということで入手しました。
左の株の子株が一斉開花したのが右の写真です。
花序の形状から基本変種と思われます。
現在有効と思われる分類をまとめてみました。なにぶん素人ですので、誤訳があるかもしれませんがその辺はご容赦を。
変種名 | 産地 | 特徴 |
var. fasciculata | メキシコ~南米大陸北部、西インド諸島 | 長く扁平な穂状花序は直立性 |
var. clavispica | フロリダ、キューバ、 (メキシコ) |
花序は豪華。穂状花序は短く棍棒状で基部は細長い。メキシコ産はT. botterii へ変更 |
var. densispica | フロリダ~中米、西インド諸島 | 花序は豪華。穂状花序は短く無柄で表面は皮革状でスベスベしている |
var. densispica forma alba | デンシスピカの白花(通常は紫) | |
var. laxispica | メキシコ、大アンティル諸島 | 花序はほとんど分岐しない。穂状花序は短く疎 |
var. pendulispica | 不詳 | 長く扁平な穂状花序が下垂性につく |
var. unispica | 中米、西インド諸島、コロンビア、グァテマラ | 花序はほとんど分岐しない。穂状花序は短く密、基部の苞は卵型~尾状。花苞は椀状小型→後に記載されたT. magnispicaとの説アリ |
var. venosispica | メキシコ~コロンビア、西インド諸島 | ブラクトに葉脈が目立ち、突出している。枯れた花序は黒くなる。西インド諸島産の個体群はT.compressaではないかという説あり。 |
参考文献: FLORA NEOTOROPICA No14 Part2 Tillandsioideae
FCBSホームページ
Tillandsia fasciculata from Oaxaca
メキシコのオアハカ州ヤグールで採集した基本変種です。
Tillandsia fasciculata Central America
基本変種のCentral America(中米タイプ)ということでTFから購入した株。開花したのはよいのですが、花序の形成がいまいちでした。ブラクトのエッジに赤いラインが入るのが特徴でしょうか?
Tillandsia fasciculata Candelabra type (T439)
Bird Rock Tropicalsから輸入したCandelabra type (燭台型)というクローンです。花序の形状が燭台に似ていることからそう名づけられたのではないかと思います。おそらく変種クラビスピカ、もしくはT.ボッテリーと思われます。
Tillandsia fasciculata var. densispica Florida
Bird Rock Tropicalsから輸入したフロリダ産のデンシスピカです。
Tillandsia fasciculata var. densispica Mexico
同じくBird Rock Tropicalsから輸入したメキシコ産のデンシスピカです。寒い時期には赤黒く紅葉します。
Tillandsia fasciculata var. densispica from Chichén Itzá
ユカタン半島のチチェンイツァー遺跡で採集した株です。現地で見た花序の形状からデンシスピカと思われます。葉の質感が硬く、コンコロールによく似ています。
Tillandsia fasciculata var. densispica Martin Co. Florida
フロリダ州のマーチン郡で採取された変種デンシスピカです。変種クラビスピカに雰囲気が似ています。
Tillandsia fasciculata var. venosispica
20~30年前に日本に輸入され、福岡県内のとあるラン園で維持されていたティランジアです。初見時から、なんだか普通のファシクラータと違うと思っていたのですが、花序が出てきて予感が的中したことがわかりました。ティランジアハンドブックにベノシスピカとして掲載されているものに酷似していたため、日本ブロメリア協会の滝沢会長に写真を見ていただいたところ、件のクローンと同じものである可能性が非常に高いというコメントをいただきました。ティランジアハンドブックの株は30年ほど前にドイツから輸入されたものだそうで、時期的に見ても同じものである可能性が高いそうです。
現在、ベノシスピカとされているものには様々な種が含まれ手いる可能性が高く(分布域がムチャクチャ広い!)、今後分類が変わってくる可能性があります。
たとえば、T.コンプレッサは現在本種のシノニムとして扱われているようですが、形態的には明らかに異なりますので、個人的な意見ですが、筆者はやはり別種とするのが妥当ではないかと考えています。
ベノシスピカのタイプ産地はプエルトリコなので誰か調べに行かないかな?
Tillandsia fasciculata 'Magnificent'
大型になる品種です。トロピフローラ社によると、パナマ北部で採集されたクローンで、自生地では開けた牧草地に点在する木の上に着生しているそうです。自生地の気候は高温多湿ですが、乾季があるようです。
Tillandsia fasciculata 'Hondurensis'
非常に人気のあるホンジュラス産の系統です。葉幅が広く、トリコームが強く出ます。自生地では岩上に着生しているようです。別種もしくは変種とする説もあったようですが2011年にこの名前で基本変種のいち系統として品種登録されました。
↑かなり豪華な花序。重さで横倒しに・・・
Tillandsia fasciculata 'Yellow & Purple'
トロピフローラからリリースされたファシクラータ系のティランジアです。通常のファシクラータは花序が朱色のような暖色系の赤に染まりますが、この系統は紫がかった寒色系の赤になるようです。花序の形状も若干異なるようですが、詳細は不明です。
Tillandsia fasciculata 'Yellow & Orange'
こちらもトロピフローラからリリースされたもの。非常にビビッドなオレンジ色で目を引きます。葉が比較的多肉質でやや質感が異なるのが特徴です。
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