Sri Aman


以前リコリスグーラミーで、アラニー・スリアマンなるものが日本に入ってきたことがある。おそらくサラワク州のSri Amanのことだろう。そこで、今回の旅行ではSri Amanまで足を延ばし、リコリスグーラミーを探すことにした。Sri AmanはKuchingから100キロ以上も離れているので、まずSriAmanにむかい、そこからKuchingへ引き返しながら探索を行うことにした。

スリアマン近くの渓流で捕まえた鯰。

早朝に目的地に着いた。町の近くは開発が進んでおり、潅漑用の水路が掘られていて、良さそうなピートスワンプは見つからなかった。そこでしばらくもっと東に進んでみることにしたが、山ばかりでクリアーウォーターの川ばかりである。良さそうな細流を見つけたので、網を入れてみると、ラスボラに混じってミストゥスの仲間が入ってきた。

このまま進んでもしばらくはポイントが見つかりそうにないと判断したぼくは、Kuchingへ引き返すことにした。しばらく車を走らせると、橋が架かっていることを示す赤い標識が見えてきた。とりあえずは、幹線道路沿いの流れをチェックしていくのが今回の作戦だ。さっそく車を止めて、橋の下をのぞき込むと・・・あった!!!!きれいなブラックウォーターのなかにクリプトがたなびいている。いきなりのヒットである。今回はなかなか調子がいいぞと思いつつ、サンプリング開始。

Cryptocoryne zonzta

ポイントデータ:pH 6.5, GH 1>, KH 1>, 導電率12ppm, 水温25度

全長5センチほどの花。
エッジには濃い臙脂色が入る。
水中葉の群落
拡大

水量が減っているのか、中州が水面から顔を出しており、丸坊主になっている。しかし、土の中にはしっかりとクリプトの根が張り巡らされていて中州はいわばクリプトの固まりといった感じだ。土質は砂浜にあるような白い砂で、さらにその下は粘土質である。ピートのような腐植土は見られなかった。しかし、きれいな場所である。一通りサンプリングが終わり、しばし見とれてしまう。

さて、次に花を探す。橋の下あたりに水上葉の群落があり、そこになにか気になる黄色いものがある。最初は黄色い落ち葉だろうと思っていたのだが、近づいて確認してみるとそれはやっぱり花だった。どんな花か判れば簡単である。ちょっと探しただけで、4本の花を発見した。

帰国後、レヨンベールアクアの佐々木氏に種類の同定を御願いしたところ、クリプトコリネ・ゾナータであることが判明した。土壌の違いによるものか、地域変異なのか明らかではないが、Lundu産の同種とは全く違った花である。クリプトの奥深さを実感させられた。

また、これを見る限り、色や形が種類の同定には全くあてにならない事が判る。国内で流通しているクリプトも、見た目だけで判断されて、間違った種類が販売されていることも少なくないようだ。今後、採集地などのデータができるだけ正確に伝えられることが必要だろう。

↓ここで見かけた魚

Glyptothorax.sp
淡水ヨウジウオ
Silurichthys.sp

クリプトのポイントをあとにし、さらにKuching方面に向かう。途中Pantuという村への脇道にはいる。しばらく走ると道に沿ってきれいなブラックウォーターが流れている。良く見ると森の中からも水が流れ出している。さっそくウエーダーを用意して突入したが、とれるのはベタクリマクラと、ブラックウオーターのお馴染みの面々のみ。しばらく網を入れていると、スリースポットグーラミーが網に入ってきたがこれが非常にかっこいい。しばらく悩んだのだが、結局リリースすることにした。

Torichogaster trichopterus
見よ!このタイガーストライプとおでこちゃん!
いつも思うが、ブラックウォーターの魚はどうしてこんなに美しいのだろうか。

さらにKuchingへ向かって車を走らせる。途中いくつかの川をチェックしたが、ドンぶかで泥が剥きだしだったり、足場が悪そうだったりして踏み込む気になれないところばかりだった。そうこうしているうちに、民家のすぐ脇を流れる川に出くわした。夕方になって陽も傾いてきていたので、またどうせダメだろうという気持ちで橋の下をのぞき込むと、そこには黒々としたクリプトの群落が!!もう夕方である。あわてて準備して、川に降りる。民家の庭先から川まで道ができており、降りるのは簡単なのだが、そこからクリプトの生えているところまでは水深がある上に岸は絶壁になっている。ほとんどロッククライミングのような調子で崖を移動していると、水遊びをしていた近所の子どもが寄ってきて好奇の目を向けてくる。それにもめげず、どうにかクリプトのもとへたどり着いた。

Cryptocoryne sp.cf.bullosa

ポイントデータ:pH 6.4, GH 1>, KH 1>, 導電率14ppm, 水温26.6度

下流側。奥の方に子供たちがいる
少し白濁した薄いブラックウォーター
水中葉
水上葉はでこぼこが際だっている。ここも地面は白い砂地だ。

ここのクリプトは、今までのものとは少し違っている。丸葉ではなくウエンディのようなアーモンド型をしており、でこぼこもはっきりしている。ぱっと見はブローサの様な感じだ。ここの群生はそれほど多くなく3〜4固まりぐらいだったので、花は結局発見できなかった。

帰国後サンプルをレヨンベールアクアの佐々木氏に渡しているので、同定ができ次第発表したいと思うが、氏によればクリプトコリネ・ブローサではないだろうかとのことである。もしそうであれば、今までいわれていた分布域とかなり異なるし、これまでクリプトが分布しているという記載のない場所らしいので、新発見という事もあり得る。・・・・かな?

追記:このクリプトコリネは新種として登録されました。Cryptocoryne uenoiとささき氏によって命名されました。感謝!

Sasaki, Y., 2002. Cryptocoryne uenoi Y. Sasaki (Araceae), eine neue Art aus Sarawak. Aqua Planta 27(4): 147-149


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