セリアン近郊

このあたりは山間部でクリアーウォーターの川が多く、R・サラワクエンシスやレッドシザーステールラスボラ等が色々な場所で見られる。

ラスボラsp

R・サラワクエンシスに混じっていた大型のラスボラ(撮影実長5cm)


Clear waterの川

ポイントデータ

pH: 7.1

GH: 2  KH: 1

導電率: 28ppm

水温:29度

クチからセリアンへ向かうと、セリアンの町に入る手前にロータリーがある。ロータリーをテバガン方面に曲がる。雑誌の情報ではこのあたりに、ベタ・タエニアータの生息地があるはずである。何とも漠然とした情報で、頼りないのだが、全く無いよりはマシである。5分ほど車を走らせると、道の右側に脇道が山のほうに向かっているのに気づいた。その脇道には、長さ10メートルほどの鉄橋がクリークの上にかかっている。僕たちはクリークに網を入れてみたが、特に収穫はなかった。そこで僕たちはその脇道を、溯ってみることにした。しばらく行くとアスファルトの舗装がなくなり、砂利道になった。更に進むと、今度はやや大き目の鉄橋があり、下に川が流れている。「ここだ!」僕は思わず叫んでしまった。鉄橋の上から見下ろした川は、まさにあの雑誌に載っていた生息地の写真、その場所だったのだ。

橋のたもとに車を停め、僕たちは河原に降り立った。見たところ、日本の中流域で見られるような、丸い石の転がるクリアウォーターの川である。水の中をのぞき込むと、河原から続く浅い緩やかな流れの中に小さな魚が泳ぎまわっているのが見える。さっそく網を入れてみると、2種類のコイ科の魚が採集できた。

プンテウス・セアレイ Puntius sealei

比較的簡単に採集できたプンテウスの仲間。1~2センチほどの個体ばかりで大型の個体は見かけなかった。水面から見ても、黒いスポットのせいで本種だとすぐわかる。左は1.5センチほどの個体。右は5センチほどに成長した個体である。写真ではわかりにくいが、成長とともに各鰭が赤く染まり一層渋みが増す。

プンテウスsp(Puntius collingwoodi ?)

非常に採集しにくかったプンテウスの仲間。沢山いるのだが、用心深くてすばしっこいため、10匹程度しか採集できなかった。左の写真は採集直後の1~2センチほどの個体。この頃は体も透明で、ラスボラ・バンカネンシスの様な感じだが、成長とともにシルバーが強くなり、右のようになる(約5cm)。どちらかというと、シルバーシャークに近い感じだ。性質は穏和で飼いやすい。眼は赤く、4本髭がある。

 

プンテウスを採集したあと、僕たちは下流に向かって歩き出した。まずは目的のベタ・タエニアータを探すのだ。最初に降り立った河原が切れるあたりに、いかにもベタが潜んでいそうな、水際まで草のせりだした場所があった。さっそく網を入れてみると、案の定ベタが網に入ってきた。1センチ程度の大きさだが、確かにマウスブルーディングタイプのベタである。喜びつつさらに網を入れてみるが、かなり広いポイントにも関わらず、とれたのは同じ様なサイズの個体が2匹だけだった。確かに雑誌の記述に個体数が少ないとあったが、これほどとは・・・・などと思いつつさらに下流へと向かう。最初の場所のすぐ下流は岩盤がむき出しになっており、いかにもベタなど居そうにない場所だったのだが、なんと居たのである。

   

左:居た!タエニアータだ!
右:こんな岩盤むき出しのところにいる

岩盤はやや切り立った高さ2m程のがけになっており、なんとか岸に沿って進んでいける程度である。水深は1m以上あり、バカナガではとても踏み込めないくらい深い。その岩盤には所々に樹木の根が水中までたれており、その陰にやや大きめの個体が隠れていたのである。また岩盤のくぼみに溜まった落ち葉の陰や、水中に落ち込んでいる木の枝の陰にもベタは隠れていた。また、一緒に採集していた友人によると、やや水深のある場所の丸い石の下にも大型の個体が居たようである。10匹程度を持ち帰ることにした。

   
 

ベタ・タエニアータ

マウスブルーディングタイプの渓流性のベタ。成長しても5センチ程度とお手頃サイズである。こういったプグナックス系のマウスブルーダーは、アピスト感覚で飼えるので、もっとメジャーになってもいいと思うのだが・・・飼育、繁殖は比較的容易下段は充分発色した状態の個体。雄は、興奮すると頭部が黒ずみ、ブラウンとブルーのコントラストが美しい。筆者の撮影した中で、最も肉眼で見た感じに近い写真である。雌は普段は上段のように雄と非常によく似ているが、産卵時は下段のような婚姻色を示す。雌雄を見分けるのは困難だが、尻ビレに細かいスポットが入るのが雌である。


フライングフォックスsp (Paracrossochilus acerus?)

背中中央のラインと鼻先がピンクに染まり、全身の黄色みが強くなる。藻食傾向が強く、大型化しない(現地では大きくても5~6センチ程度だった)ので、水草水槽に向いているかも。

この川でぼくが一番感動したのは、なんといってもフライングフォックスの群を目撃したことと、ボルネオプレコを採集できたことだ。フライングフォックスは十数匹の群になってやや水深のある場所を群泳していた。その群がゆっくり移動していく光景は非常に優雅で、是非アクアリウムで再現してみたいと思っている。採集してみてわかったのだが、このフライングフォックスは、日本のショップで見かけるものに比べやや頭が扁平で、鱗の模様がはっきりしている。水槽内でも比較的穏和で、藻食傾向が強いようだ。

魚を採集しながら移動していくと広い川原に出た。日本の川でもよく見かける丸石の転がる川原だ。そこはかつて中州だったらしく、乾期になった今、両側を流れていた川はその一方が干上がり、いくつかの大きな水たまりを残すのみである。何気なくその水たまりをのぞき込むと、丸石の間でなにか動いている。よく見るとそれは2センチほどの大きさのボルネオプレコではないか。それもかなりの数が水たまりに取り残されている。日本のショップで見かけるボルネオプレコには2タイプのものが混じっていることをご存じの方も多いと思う。ジャーマングレイに白いスポットが入るものと、焦げ茶に黄土色のラインとスポットが入るタイプである。実際に現地でもこれら二つのタイプは混棲しており、一緒に採集できた。その他リザードフィッシュも採集できた。すぐ近くの水深5センチ程度の瀬でもボルネオプレコを見かけた。

ボルネオプレコ

焦げ茶タイプである。

現地でのボルネオプレコ

結構活発に泳ぎまわる姿が見られる。


Gedong近郊


パイナップル畑

セリアンからゲドンへ向かう。雑誌によれば、ここはベタ・ブロウノルムの生息地である。車を走らせると、山道が終わり、左右にパイナップル畑の広がる開けた場所に出る。道は、ここからゲドンの町に向かってまっすぐのびている。街まで行ってみたが、それらしき場所は見つからなかった。そこで道を引き返すと、道に沿ってブラックウォーターが流れているのに気づいた。ブラックウォーターは、畑の向こうに広がる森からしみ出してきているようだ。確かに雑誌の記述も、その森の中の溜まり水で採集したようなことが書いてある。しかし、私たちは限界に近かった。連日の猛暑の中での採集で疲れ切った私には、炎天下でバカ長を履いて、パイナップル畑に生い茂る雑草をかき分け、100メートル歩いて森にたどり着くのは非常におっくうだった。そこで、とりあえず道路わきの流れで採集を行うことにした。いま思えばもったいないことをしたものである。

ここで見かけた魚

ラスボラ.sp

10センチ以上になる大型のラスボラ。各鰭が赤く染まる。レッドテールラスボラとでも呼ぶべきか?右の写真は採集直後にホテルで撮影したもの。水の色に注目!これくらい赤い水が流れているのだ。

   

カリノテトラオドン・サルバドール

純淡水域、それも上の写真のようなブラックウォーターで採集した淡水フグである。5センチを超えるくらいから雌雄の判別は容易。闘争時には、ウルトラマンの背鰭(?)のような突起が出現する。セリアン近郊では数カ所で採集できた。ピンボケですみません。(撮影実長3cm)

photo:Ichiro Ueno


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