Lunduへのフェリー乗り場

ポイントデータ:pH 6.5〜7.0, GH 1>, KH 1>, 導電率23ppm, 水温26度

クチンからLunduに向かって延々車を走らせるとフェリー乗り場に行き着く(写真左)。そこから道を引き返して、最初の川がここである。水は見て判るとおり、少し白濁したブラックウォーターで、かなり水量も多い。

ここには今まで2回訪れたが(4月、8月)、時期によって大きく様子が違っていた。雨季明けの4月は水量も多く、奥の林の中にはクリプトコリネの群生が水没して多数見られた。8月には水量も減っており、林のクリプトコリネは完全に水上に顔を出していた。また、水深30〜40cmほどの場所にはブリクサ(ロングリーフ)が多数見られた。林の中には流木と植物の根が複雑に絡み合った間にピートが堆積しており、また水が流れている場所には、海岸で見られるような細かい白色の砂が堆積していた。

 

Parosphromenus allani (Lundu)

サラワク州の西部、Lundu近郊で採集したParosphromenus allani である。

いわゆるリコリス・グーラミーのアラニー種である。現地では割と固体数が多く、水量の減った8月には比較的大型の固体がブリクサの間や流木の陰に見られた。

ニボン産のアラニーは赤く発色する事が知られているが、このLundu産の個体は赤褐色〜黒褐色の発色が見られる。

Lundu産の個体は赤く発色しないとの記述もあるが、筆者宅ではこのようにかなり赤くなっている。さすがに有名なNibong産の個体の写真には劣るが、かなり赤くなるのは事実だ。

雄(全て同一個体)

筆者宅ではブラックウォーターで飼育しているので、かなり赤っぽく写っているが、それを差し引いてもかなり赤く発色している。また腹鰭はグリーンに輝き美しい。

雌個体
繁殖

アナバンテッド特有の激しい抱擁を見せるペア。

バブルネストビルダーだが、ベタのようにあらかじめ雄が泡巣を作るのではなく、産卵しながらその場で泡を吐いてゆく。

卵は共同で泡巣に収容する。

(ビデオの赤外線撮影)

白い半透明の卵が確認できる。
産卵翌日に無精卵と思われる卵が10個ほど落ちた。

産卵3〜4日後に孵化する。

ヨークサックをつけた稚魚

photo:Ichiro Ueno

ベタ・レイー(旧ベタsp.aff プグナックス)

ボルネオにはプグナックス種はいないとのことだが、どう見てもプグナックスである。成長するとオスは尾鰭がスペードテールになる。丈夫で飼育は簡単、私はヒーターのトラブルで全滅させてしまったが…。現地では4月には比較的多く見かけたが、8月には固体数は少なかった。

採集直後の個体

あ〜・・・発色イマイチですね〜

フォルムはいいけどね〜

美しくなる可能性がちらっと・・・


クリプトコリネ群生地
(協力:レヨンベールアクア)

2000年7月7日: 3度目のLunduである。今回は魚だけでなく、クリプトもターゲットだ。レンタカーをとばしてポイントにたどり着いたのは14時をまわっていた。さっそくウエーダーを引っぱり出し、採集の準備である。装備を整え、いざ!水の中へ。

川に架かる橋のたもとから河原に降りる。まずは、足場の良い下流川から探索である。河原の地面は海岸にあるような白い砂地だ。

やはりこの川はかなり魚影が濃い。水中を覗くと、小さなレッドラインラスボラの群が泳ぎまわっており、水面にはスネークヘッドがボイルを繰り返す。ぼくが歩き回ると泥が舞い上がり、その泥にラスボラが寄ってくる。

ぼくは岸よりの草のした、水中のブリクサや流木の陰に網を入れながら下流に移動していった。この時期には、アラニーはあまり小型のものはとれないようで、大きな個体ばかりが網に入ってくる。今年はベタ・レイー(旧affプグナックス)の個体数は少ないようだ。そうこうしているうちにクリプトが群生していた場所に近づいた。

このとき正直言ってぼくは少しがっかりした。いぜん来たときには確かにクリプトの数は少なくなっていたのだが、今年はさらにひどい。クリプトの生えていた中州は大半が干上がっており、水中のクリプトにはアオミドロがからみつき、おせじにもきれいとはいえない状態だった。とりあえず。この場所でサンプリングし、さらに下流に向かう。

 中州のわきのクリプト。
風前の灯火・・・・・
 下流で見つけた群生。

岸に沿って下流に向かうと、ぽつりぽつりとクリプトが生えている。さらに林の奥に流れに沿って進むと、1〜2メーター四方の群生がスポット的に散在している。ぼくはこれを見てようやく安心した。なぜなら、ここに来る前に訪れたクチン近郊のポイントでは、工事によって細流に重油が流れ込んでいたり、一カ所ではクリプトが周りの木の伐採により消滅していたりしたからだ。

群生は水上葉ばかりだったので、花を探す。流れに沿って下って行くが、クリプト自体は結構生えているのだが、なかなか花は見つからない。そうこうしているうちに次第に日が傾いてきた。これ以上探索しても状況は変わらないだろうと判断し、とりあえずパッキングとポイントデータの測定を行った。

データを記録し終わると5時をまわっていた。日差しは弱くなったとはいえ、まだ明るい時間である。ぼくは上流へ向かって踏み込んでみることにした。上流側は下流に比べかなり樹木が密生しており、鬱蒼とした感じだ。足下もピートの混じった泥が堆積しており、所々泥の中から気根が飛び出している。ぱっと見た感じクリプトの密度も下流川と変わらない感じだ。足下も悪いし、もう帰ろうか?などと思いつつ、何気なしに沢山の気根が突き出している窪地をわたったところでぼくは驚いてしまった。その向こうに広がる木々の間の窪地は一面クリプトに覆われていたのである。

 ↑写真ではわかりにくいが、一面の
クリプト。すごい群生地だ!
 ↑アップで見るとこんな感じ

今まで見たものとは比べものにならないくらいの規模の群生地である。おそらく最近までは水に浸かっていたのだろう。一見クリプトが生えていないように見える場所にも、葉が溶けて茎だけになった株が地面を覆い尽くしている。とりあえず窪地の水が残っている場所に網を入れてみたが何も網には入ってこなかった。いかにもなにか居そうだったので、期待はずれだったのだが、ふと横に目をやるとなんとそこにはクリプトの花が!!

あわてて周りを探すとあるある。合計4つの花が咲いているではないか。さっそく写真を撮ってサンプリングする。花は想像していたよりかなり大きく30センチ近くある。

帰国後、種類の鑑定をレヨンベールアクアの佐々木氏に御願いしたところクリプトコリネ・ゾナータと判明した。

すばらしいポイントである。いつまでもこのままで居てほしいものだ。

   
 やった!ついに見つけたクリプトの花。
 
30センチぐらいある。
遠山の金さんもびっくり
(朝日新聞です。紙面に注目)
非常に美しい 



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