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ティランジアの交配種について

最近、ティランジアの交配が盛んになり、交配種を店頭で見かけることが多くなりました。
カタログや写真集、ウェブサイトなどできれいな開花写真を目にして、魅力的な交配種に心を奪われた人も多いと思います。
しかし、交配種を購入する場合、少し気をつけてほしいことがあります。
それは、「買ってはみたが期待通りの花が咲かない」「見た目からしてぜんぜん別物」ということが起こるかもしれないということです。
私も同じようにがっかりした経験がありますので、購入する前に知っておかなければならないことを説明しようと思います。

そもそも交配種って何?

簡単に言えば、雑種のことです。違う種類の花粉をめしべにつけて受粉させてできた種子から育てられた株のことをさします。
自然界でもこういったことは偶然に起こりえますので、雑種が自然界で偶然発見されることもあります。このような株は自然交配種、自然雑種、自然交雑種と呼ばれます。
また、ある特定の特徴を強調させたいために同種間で人工的に交配を行うこともあり、日本語ではこれも交配種と呼ばれますが、紛らわしいので何らかの呼び方を考えてほしいものです。個人的には選抜交配種とか、園芸品種がしっくり来ると思います。

さらに、同じ交配親から生まれた一群をグレックス( grex )と呼ぶことがあるようです。

品種名って何?

園芸界では優れた特徴を持つ個体に名前をつけることがあります。これが品種名です。
ここで間違ってはいけないのは、品種名というものは個体につけられる名前であって系統(グレックス)につけられた名前ではないということです。
わかりにくいので、芸能人一家の高島家を例に説明したいと思います。みんな顔を知ってるでしょうから。

家族構成は、父:高島忠夫、母:寿実花代、次男:政宏、三男:政伸、(長男は幼少時に他界)

高島兄弟は植物的に交配親(失礼!)だけで表記すれば寿実花代X高島忠夫ということになります。しかし、ご存知のようにお二人とも見た目は異なります。政宏さんと政伸さんは似てはいますがまったくの別人です。

つまり、お二人の系統(グレックス)としての名前は“寿実花代X高島忠夫”ですが、それぞれまったく異なるのでそれぞれに政宏、政伸という個人名(品種名)を与えられているということになります。

同様に植物も、同じ交配親から生まれた株でも個体によって見た目が異なりますから、その中でも特に優れたものに名前をつけて特別扱いしているのです。原理的には同じ交配親から複数の品種が出現する可能性もあるということになります。

現状と問題点

実際に園芸店に行ってみると品種名のつけられた植物が大量に並んでいて、一見ひとつの系統として繁栄しているかのような気がします。
植物は人間と違ってまったく同じ遺伝子を持つクローンを比較的簡単に作ることが可能なので、もともと1個体だった植物を一度に大量に増やすことが可能なのです。つまり、園芸品店に並んでいる同一品種名の植物はみな人工的に増やされた同じクローンなのです。

さて、話をティランジアに戻しましょう。ティランジアも交配種などに品種名をつけることは盛んに行われています。当然、品種名は個体名としてつけられるのが原則なのですが、現実にはそれが行われていません。
ティランジアではクローンを大量に増やす技術は商業的には確立されておらず、同じ遺伝子を持つクローンを得るには子株の株分けに頼っているのが現状です。非常に非効率で商売としては成り立たないのでしょう。
そこで、現在アメリカのナーセリーを中心に行われているのが、交配の系統(グレックス)自体に品種名を与えて販売する(もしくは品種名を与えた個体と同じグレックスの植物はその品種名で売ってしまう)というやり方です。これなら実生で大量に生産することができます。
また、品種名を与えた固体の自家受粉もしくは同一クローン苗同士の交配品にも同じ品種名をつけて売られています。
いずれの場合も個体によって特徴がばらつきますので、ある意味、当たりはずれが出てきます。

洋ランなどのようにどういった経緯で作出された苗なのか、ラベルを見れば一目瞭然。趣味家はどのような花が咲くのかある程度想像がつく。というのが本来あるべき姿なのだろうと思います。
今後改善されてゆくことを、コレクターとして切に願うばかりです。



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