2003年タワウ

2003年の正月をマレーシアはサバ州のタワウで過ごすこととなった。タワウはサバ州とインドネシアの国境の町であり、また、近くには有名なダイビングスポットが点在するためそれらへの移動基地として有名である。位置的にはベタ・アルビマルギナータで有名なセブク水系に非常に近く、魚種的に非常に興味のあるところである。以前からベタ・ウニマクラータ(オセラータタイプ)の産地として知られており、今回のターゲットのひとつである。また、サバ州ではサトイモ科の水棲植物であるクリプトコリネの記録がなく、その調査も今回の目的である。今回は2日半しか時間がとれなかったので、本格的な調査というよりは、予備調査といった色合いが強い。

TAWAU西部

タワウでの足であるレンタカーの手配がうまくいかず、初日は午後2時過ぎからのスタートとなった。初日の予定はタワウ西部の調査である。ここはもっともセブク水系に近く、興味深いエリアである。幹線道路をひたすら西に向かう。しかし、行けども行けども道の両側には、アブラヤシのプランテーションが拡がっている。それでも原生林を求めてひたすら西に向かう。道はいつしかアスファルトの舗装から砂利道に変わっている。今回の車は個人所有のもので、なにを考えているのか四駆の多いこのタワウでスポーツタイヤを履いているのだ。自慢の車らしく、なんだか受け渡しの時も貸したくなさそうである。(だったら最初から貸すなんていうなよな!言い値で借りてやってるんだから砂利道ぐらい我慢せい!)と言った状況なので足回りが心配である。12月から1月はタワウでは比較的雨の多い季節なので、川はどこも赤茶色に濁っており、表土の流出が見られる。プランテーション化の影響であるが、古いプランテーションや原生林からの流れでは濁りが少ないはずなのでそのような流れを探してゆく。すでにだいぶ陽も傾いており、そろそろ帰ることを考えないといけない時間になってきた。路面も砂利から固められた泥に変わっており、これ以上進むのは難しい状況になってきていた。

本日はここでUターン
ここに突入。

ようやく、有望そうな流れに行き当たった。水は濁っているが、水量も豊富で良い感じだ。流れの緩やかな溜まり水が急な流れによってつながっている、高低差のある渓流だ。なにもとれないかもしれないと思いながらも、網を入れると1センチほどのベタの稚魚が網に入ってきた。さらにあたりを探ると10センチ近い大きなウニマクラータ系のベタがとれた。それから十数匹のベタが採集できたのだが、どの個体も色が抜けたように白っぽい体色をしており、すわ新種発見かとちょっと興奮してしまった。しかし、よく見てみると大型のオスにはウニマクラータ特有の発色があり、ぬか喜びに終わってしまった。

ベタ・ウニマクラータ
オス
メス(?)

ポイントデータ

水温26度、pH7.0、GH,KH<1、TDS22ppm

第2のポイントです

しばらく網を入れるが、とれるのはベタばかりである。ようやく沼エビの仲間が網に入ってきたが、個体数が少ないのでベタがこればかりを食べているとは思えない。おそらくは昆虫が主食ではないだろうか。採集が終わり、道具を片づける頃にはあたりはもう薄暗くなってきていた。潮時である。夜にこんな山の中で車のトラブルがあっては大変だ。ついに原生林には出会うことが出来ないまま、本日はここで終了となった。

TAWAU東部

どこまでも続くアブラヤシのプランテーション。見渡す限りの草原だが、これも熱帯雨林を伐採したもので、よく見るとアブラヤシの苗が植わっている。
山を下から見上げるとこんな感じ・・・上の方に原生林が少しだけ残っています。後は見渡す限りのカカオ畑。これでも良心的な方ですが・・・

二日目、三日目はタワウの東側とタワウ・ヒル国立公園付近の調査だ。まず、国立公園付近の標高の高い場所へ向かう。川の状況は西部と変わらず、芳しくない。また、標高の高いエリアはアブラヤシではなく、カカオが栽培されており、やはり見渡す限りのプランテーションである。車で入れるぎりぎりまで入り込み、そこからプランテーション内の小道を歩いて原生林に向かった。しかし時間的な制約もあり、原生林に達しないまま1時間ほど歩いて断念した。車に戻り、幹線道路を東に向かう。道は非常によく、インフラは比較的よく整備されている。プランテーション化によって経済的に潤っているとするならば、なんだか複雑な気持ちだ。しばらく行くとベタフリークには有名なSg Balung(バルング川)が見えてきた。ここはベタ・バルンガの名前の由来となった場所で、この付近の細流に生息しているとのことである。当然それらしい流れを探ってみたが、結局出合うことは出来なかった。

スンガイとは川のことである
左側にはヤシのプランテーションが拡がっている

Sg Balungの東側でほとんど濁りのない細流を見つけ、網を入れてみることにした。ここは、比較的新しいアブラヤシのプランテーションなのだが、すぐ近くまで原生林が迫っておりなかなか期待できるポイントであった。網を入れるとすぐにベタが網に入ってきた。小型の個体が多く、体側のメラノパターンがアカレンシス系のベタに似ていたので「おや?」と思ったのだが、大型個体を見るとやはりウニマクラータであった。ここの水質はpH5.1と弱酸性で、色彩的にも東カリマンタン産に近い印象を受ける。このポイントはベタの個体数が非常に多く、水中をじっと観察すると、そこかしこで水底の小石の間を行き来するベタの姿を見ることが出来た。また、甲長20センチほどのマレーハコガメと思われる亀を見つけた。

さらに東へと向かい、・・・・付近まで探索したが、どこまで行ってもプランテーションばかりでクリプトコリネどころか、状態のいい川すら発見できない状況であった。結局三日目も同じような状況で目立った成果もなく今回の調査旅行は終了となったのであった。

旅先で出会った生き物たち

巨大ダンゴムシことタマヤスデ
う〜ん、造形美ですねー
トンボ玉のようなこの色合い
やたら踏ん張りの効いたカメムシですね。
タラバアシカメムシと勝手に命名
背中には髑髏の紋をしょってます。
ツンベルキアの仲間
沢山咲いていたスミレのような花
今回よく見かけた蔓状の豆科植物
直径4センチほどの花



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